「東京で本当に美味しい鰻を食べたいなら、ここしかない」——そう囁かれる問屋直系の聖地が、台東区入谷にひっそりと構えています。その名も「入谷鬼子母神門前のだや」、通称・のだや。明治元年から続く鰻卸問屋の血脈を継ぐ江部(えべ)店主が、圧倒的な仕入れ力で集めた幻のブランド鰻と極上天然鰻。今回は関東風・関西風・そして売り切れ御免の裏メニューまで、鰻の世界の奥深さを丸ごと食べ比べてきました。読み終わる頃には、きっと今すぐ暖簾をくぐりたくなるはずです。
知る人ぞ知る、問屋系譜の超名店
「のだや」の歴史は、なんと明治元年(1868年)にまで遡ります。もともとは鰻・川魚専門の職人を関東近郊の名だたる料理店へ送り出す、いわば”職人の本家”のような存在として150年以上にわたり暖簾を守ってきました。単なる一軒の飲食店ではなく、関東の鰻料理人たちの技術を束ねてきた系譜そのものが、このお店のバックボーンなのです。
現在お店を率いるのは、店主・江部惠一(えべ・けいいち)氏。1959年生まれ、大学では法律を学んだのち家業に入り、以来40年以上にわたって鰻一筋に技を磨いてきました。長らく根岸の地で店を構えていましたが、建物の老朽化により2012年に一度閉店。「この地域の鰻文化を途絶えさせてはならない」という強い思いから、2013年2月に現在の入谷鬼子母神門前へと場所を移し、装いも新たに「のだや」として再出発しました。問屋として培ってきた”仕入れ力”は今もそのままに、他店ではまずお目にかかれない幻のブランド鰻や、幻の天然鰻が集まる稀有なお店として知られています。
食べログの「鰻 百名店」にも選出されている実力店で、地元の食通や鰻マニアの間では以前から評判の存在。公式のInstagramやYouTubeチャンネルでも、日々の仕入れ状況や店内の様子を発信しています。
愛される店の雰囲気 ― 有名人も通う名店
店内の壁には、これまで訪れた著名人のサインや記念写真がずらりと飾られており、長年多くの人に愛されてきたお店の歴史を物語っています。かと思えば、暖房器具の陰にちょこんと佇む「うなぎいぬ」のぬいぐるみなど、思わず頬が緩むような可愛らしい一面も。入店した瞬間からスタッフの皆さんの気持ちの良い接客に迎えられ、老舗の風格と温かいホスピタリティが同居する、居心地の良い空間になっています。
店舗情報とアクセス
| 店名 | 入谷鬼子母神門前のだや(通称:のだや) |
|---|---|
| 住所 | 東京都台東区下谷2-3-1 |
| アクセス | 東京メトロ日比谷線「入谷駅」2番出口より徒歩約1〜2分/JR「鶯谷駅」南口より徒歩約5分 |
| 営業時間 | 昼の部 11:00〜14:30(L.O.)/夜の部 17:30〜(フードL.O. 20:00、ドリンクL.O. 20:30) |
| 定休日 | 月曜日(祝日の場合は翌火曜)、ほか月に数回不定休あり |
| 予約 | 完全予約制・オンライン予約あり |
| 電話番号 | 03-3874-1855 |
日比谷線「入谷駅」なら改札を出てすぐ、都心のど真ん中というわけではありませんが、その分「ここでしか出会えない本当に美味しい鰻」を求める価値は十分すぎるほどあります。
夜の部の最終予約受付はなんと17時45分。1日に受け入れられる組数が限られているため、予約必須なのはもちろん、早い時間に入店するほど、後述する裏メニュー「かすみうな太郎」に出会える確率がぐっと上がると言われています。極上の鰻を受け止める土鍋炊きのご飯まで抜かりなく美味しいので、ぜひお腹を空かせて臨んでください。
マニア必見!関東・関西「3種食べ比べ」実食レポ
のだやの真骨頂は、なんといっても複数のブランド鰻・天然鰻を揃え、しかも焼き方まで選べる懐の深さ。今回は看板の養殖ブランド2種と、あるとき限定の裏メニュー、あわせて3種類を食べ比べてきました。
①わしょう(関東風)――蒸してとろける、ふわっと食感
まず1種類目は、宮崎県産のブランド鰻「わしょう(和匠うなぎ)」を、関東風でオーダー。関東風は一度蒸してから焼き上げるのが特徴で、余分な脂を落としながら身をふっくらと仕上げる技法です。口に運ぶと同時にとろけるような、まさに”箸で切れる”やわらかさ。ブランド鰻のポテンシャルを最大限に引き出した、至福の一切れでした。
②かねみつ(関西風・地焼き)――パリッと香ばしい中毒の味
2種類目は、愛知県三河一色産のブランド鰻「かねみつ(兼光新仔うなぎ)」を、蒸さずに焼き上げる関西風=地焼きでオーダー。脂をしっかり纏った身を地焼きにすることで余分な脂が落ち、皮目はパリッと香ばしく、身はしっとり。さらに関東風とは異なる、少し甘めのタレをまとわせているのもポイントで、これがまた病みつきになる美味しさなんです。普段は関東風の柔らかい食感に慣れている人にこそ、ぜひ一度味わってほしい一皿です。
③かすみうな太郎――売り切れ御免の幻の裏メニュー
そして最後は、運が良ければ出会えるという裏メニュー「かすみうな太郎」。茨城県・霞ヶ浦で獲れる、お腹が黄色いのが特徴の希少な天然黄金鰻を使用した、数量限定の一品です。関東風で仕上げた天然鰻の蒲焼に、ブランド鰻のう巻き、そして甘めのタレで仕上げた関西風の肝焼きが、一つの重箱にぎっしりと詰め込まれた、まさに欲張りな夢のセット。天然ならではの奥深い旨みと、ブランド鰻のとろける脂、両方の魅力を一度に味わえる贅沢なメニューです。
| メニュー | 価格 |
|---|---|
| わしょう重(関東風/日向の和匠うなぎ) | 6,800円〜 |
| かねみつ重(関西風・地焼き/匠の兼光うなぎ) | 6,800円〜 |
| かすみうな太郎(裏メニュー・数量限定/霞ヶ浦産天然黄金鰻) | 時価(参考価格 18,000円) |
店内のメニューによれば、「かすみうな太郎」の”かすみ”は産地である霞ヶ浦にちなんだ名前。かつて帆引き船漁で知られた霞ヶ浦は、良質な川エビや藻など栄養豊富な水域で、そこで育った天然鰻は身や骨まで柔らかいのが魅力とされています。近年は漁獲量が減り、出会えたら幸運な一品なのだそうです。
山椒は鰻ではなく、ご飯にひとふりが正解
実食してぜひお伝えしたいのが、このお店の山椒の使い方。お店に掲示された説明書きによると、のだやで使う山椒はもともと天然鰻の奥みを消すために使われてきた、香り高くクセのないクリアな風味が特徴なのだそう。まずは何もかけずにそのまま賞味し、そのあとは鰻の身に直接かけるのではなく、ご飯に少しかけて食べるのがおすすめだと案内されています。香りが強い分、鰻本来の繊細な味わいを損なわないための、お店ならではの気遣いなのでしょう。
ちなみに薬味の山葵(わさび)にもこだわりがあり、厳選された最高級の本山葵を毎朝すり卸して提供しているとのこと。山葵好きの方は、遠慮なくお店にリクエストしてみるのも良さそうです。
天然信仰はもったいない!?マニアが唸る「食べ比べ」のすすめ
「天然のほうが養殖より絶対に美味しい」——そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。ところが実際は、季節によってその力関係はガラリと変わるのだそう。今の時期は天然鰻の脂はむしろ控えめで、対する養殖鰻はたっぷりと脂が乗っているのだとか。つまり「どちらが上か」ではなく、季節ごとに「どちらも美味しい」というのが正解のようです。
天然鰻最大の魅力は、大自然の中を生き抜いてきたからこそ宿る、良い意味での”雑味”や奥深く複雑な味わい。一方の養殖鰻は、とろけるようなストレートな脂の旨みが持ち味です。優劣をつけるものではなく、それぞれ全く違う個性を持った、いわば別のごちそうと考えるのが良さそうです。
のだや最強の攻略法は「複数人でのシェア」
これだけの名店で、1人1種類だけ食べて帰るのはあまりにもったいない話。ぜひ複数人で訪れて、関東風・関西風という焼き方やタレの違い、そして天然・養殖それぞれのポテンシャルの違いをシェアしながら食べ比べるのが、のだやを120%味わい尽くす最強の楽しみ方です。
まとめ ― 入谷まで足を延ばす価値、あります
明治元年から続く問屋の系譜、卓越した仕入れ力、そして関東風・関西風・天然・養殖と何通りもの表情を見せてくれる鰻の世界。「入谷鬼子母神門前のだや」は、都心からは少し離れていても、鰻好きなら一生に一度は訪れておきたい名店でした。予約は必須、しかも早い時間ほど幻の裏メニューに出会えるチャンスが広がります。ぜひお腹を空かせて、大切な人と一緒に、食べ比べの醍醐味を味わいに訪れてみてください。
なお、当ブログでは他にも予約必須の名店を紹介しています。そばの実力店をお探しなら立川「蕎麦懐石 無庵」の記事、幻の食材をとことん楽しみたい方には銀座「山助」の本マグロ解体ショーの記事もぜひあわせてご覧ください。
→ 立川「蕎麦懐石 無庵」は予約必須|そばEAST百名店7年連続選出の古民家名店を実食レポ
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予約は必須。早めの来店が、幻の一皿への近道です。
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参考・出典:
・入谷鬼子母神門前のだや(食べログ)
・入谷鬼子母神門前のだや 公式Facebook
・店主・江部惠一氏プロフィール(ヒトサラ)
・店内掲示の案内板・メニュー資料(取材時撮影)
※価格・営業時間・メニュー内容は取材時点の情報です。仕入れ状況により変動しますので、ご来店前に最新情報をご確認ください。


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